自律神経概論(2)
 2.自律神経の末端
 
 自律神経の働きを理解していただく為に、少し細かいお話をします。これを理解していただくと主な医薬品の3分の1は理解出来る基礎が出来ますから、少し専門的ですが敢えて記述することにしました。できるだけ、分かりやすく書きますので、頑張って読んでみて下さい。
 さて、自律神経の概略は先に説明しましたが、今回は、神経の末端と、効果器官との繋ぎ目の話なのです。
 復習になりますが、自律神経の末端と効果器官との間の神経伝達物質は
  交感神経  →アドレナリン(正式にはエピネフリンといいます
  副交感神経 →アセチルコリン
という事になります。

 交感神経と副交感神経は、体のさまざまな器官で、相反するように働きますが、それぞれの神経伝達物質が異なる所がミソなのです。
 というのは、この神経の末端に薬物を作用させると、各器官がコントロール出来るからです。
 例えば、実験動物の腸管の一部を切除して、試験管の中に入れ、アセチルコリンを入れると腸管は収縮し、アドレナリンを入れると腸管は弛緩します。
 腸管に限らず、殆どの臓器や器官で、このようなコントロールが出来るのです。
 もし、交感神経と副交感神経の伝達物質が同じであったなら、私達は、医薬品を作るために別の方法を考えなくてはならなかったでしょうね。
 胃の場合について言いますと、胃という臓器には痛覚はありません、しかし、胃の筋肉が収縮した場合(痙攣といいます)や血液が回らなくなった場合(虚血といいます)に脳が痛みとして捉えます。
主には痙攣(Spasm)が多いのですが、この時、副交感神経の末端でアセチルコリンの作用を妨げる薬(抗コリン剤といいます)を服用すると、副交感神経が抑えられて、交感神経が優位になり、胃の筋肉は収縮をやめて、痙攣がおさまり、痛みは止まります。

次に、アドレナリン作動神経の末端の図を下に書いてみます

 アミノ酸の1種のチロシンが、神経細胞に取り込まれて、ドーパ、ドーパミンへと変化して、ドーパミンは、ノルエピネフリン、エピネフリンへと変化します。
 ドーパ、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンは、化学的には、カテコール核にアミノ基が結合している形をとりますので、カテコールアミンと総称されます。
 これら、カテコールアミンは神経伝達物質です。
 自律神経では、ノルエピネフリン、エピネフリンが伝達物質となるのですが、エピネフリンは、興奮効果、抑制効果共に強いのですが、ノルエピネフリンは、興奮効果がつよく、抑制効果は少ないのです。
このため、神経末端の神経伝達物質の刺激を受ける側の器官(レセプターといいます)を、αレセプター(主に興奮を起こします)と、βレセプター(主に抑制作用)に分けています。
 βレセプターは、さらにβ1とβ2に分類されます。β2レセプターは心臓の一部の器官と、気管支平滑筋、子宮(非妊娠時の弛緩)、肝臓、膵臓に分布しますが、ここでは、心臓と気管支平滑筋にある事だけ覚えておいてください。
 すこし難しい内容でしたが、重要な事ですので、また気が向いたらこのページを見てくださいね。
ろばさんの服薬指導