脂溶性ビタミン
1.ビタミンA(レチノール)
欠乏症
 夜盲症、体重減少、食欲減退、皮膚の異常乾燥、角化症
過剰症
 嘔吐、神経過敏、脱毛、四肢の有痛性腫脹、皮膚のはく脱性発疹、催奇形
 ビタミンA(レチノール)は、夜盲症という欠乏症で有名ですが、視覚物質といわれるロドプシンの材料になります。従って、レチノールの不足は視覚に影響を与えます。
 レチノールには、視覚以外に、成長促進作用、皮膚粘膜の形成作用があります。また、レチノールは体内でレチノイン酸になり、レセプターと結合して、このレセプターはDNAと結合して上皮組織を維持し、細胞の分化を制御します。
 このDNAの遺伝情報の発現の制御作用は、近年注目されて、上皮癌の抑制作用があるという説もあります。
 ベータカロチンは、レチノールが2個結合したもので、小腸でレチノールとなりますが、吸収率などを考えるとレチノールの3分の1の効力として評価されています。
 レチノールの1日所要量は成人男性で1000単位、成人女性で800単位です。
 レチノールは過剰症が出やすく、急性毒性は30万単位で、慢性毒性は10万単位以上の服用を数ヶ月続けることで危険がありますがありますが、5万単位以上の摂取は危険域と考えられています。特に小児は過剰症が出やすいので注意が必要です。
 ただ、この量は、健康食品などをはぶいて、普通の食事では、通常摂り得ない量なので、普通の生活では心配する必要はありません。
 ただし、薬品や健康食品で、ビタミンAとか、レチノール、ベータカロチンなどのカロチン類の表示が無くても、クロレラなどのベータカロチンの多く含まれるものは、1日摂取量に注意するべきです。

2.ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)
欠乏症
 くる病
過剰症
 食欲不振、体重減少、尿意頻発、嘔吐
 ビタミンDは、小腸でのカルシウムの吸収促進と、二次的にリンの吸収促進をし、骨へのカルシウム沈着を促します。ビタミンDの欠乏症のくる病は骨の形成不全なのです。
 通常はビタミンDは、ヒトの皮膚が日光に当たると合成されますので、日照条件の悪い環境でないと欠乏はしません。
 しかし、小児や妊婦などには、ビタミンDの補給が必要な場合もあります。老人の骨粗しょう症治療薬として用いられます。ただし、ビタミンDも、過剰症が出やすいので、病院などで処方された場合は、容量は必ず守ってください。ビタミンDの過剰症は、服用をやめると、すぐに消失します。

3.ビタミンE(トコフェロール)
欠乏症
 軽度の溶血性貧血
過剰症
 ほとんど無し、但し1日800mgで倦怠感、悪心、下痢が起きる事がある。
 人間では、新生児での貧血以外は、欠乏症はないのですが、動物実験では、トコフェロールの欠乏で不妊症、筋ジストロフィー、肝壊死、神経障害がおきます。
 治療薬としては、末梢循環障害などに使用されています。

4.ビタミンK1(フィトナジオン)
欠乏症
 血液凝固不全
過剰症
 幼児で溶血性貧血、高ビリルビン血症、核黄疸(メナジオン[ビタミンK2]の場合)
 ビタミンKは、血液凝固に関与するプロトロンビンの合成に関与しますが、低プロトロンビン血症、以外は使用されません。
 以前は肝障害に伴う低プロトロンビン血症で使用されましたが、通常、ヒトでは、ビタミンK欠乏症はありませんし、注射によるショックなど副作用が問題となり、今では、ほとんどのビタミンK製剤は製造中止となっています。また、ビタミンK欠乏症に対してビタミンK2は使用するべきではないとされています。
 ビタミンK2の注射薬は、国内では製造されていませんが、内服薬は、主に骨の形成を促進する作用に着目されて骨粗しょう症の治療薬として使用されています。
 ビタミンA、EはビタミンKの作用を抑えてしまいますので、併用は注意です。ただし、ビタミンA、Eの摂取が大量でなければ問題はないとおもいます。

5.必須脂肪酸(ビタミンF)
 リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸は、必須脂肪酸と言われ、ビタミンFとも言われます。これらの不飽和脂肪酸は、コレステロールの代謝に関与しています。
 
 
ろばさんの服薬指導