水溶性ビタミン
1.ビタミンB(チアミン)
欠乏症
 疲労の蓄積、神経異常、多発性神経炎、脚気(浮腫、循環器異常、神経麻痺)
過剰症
 胃部不快感、悪心、嘔吐、頭痛など
 通常のビタミン剤は1日量は5〜100mgで設定されています。
チアミンは糖質の代謝に関与します。体内に摂取された糖質をエネルギーに変えるのに重要な働きをします。欠乏症の時は、神経に影響が出る事が多いです。夏場に汗をかくと、水溶性ビタミンも流出してしまい、チアミンが不足すると食欲も無くなったりしますね。
ちなみに、1日の所要量は0.8〜1.0mgとされていますが、通常のビタミン剤は1日量は5〜100mgで設定されています。

2.ビタミンB(リボフラビン)
欠乏症
 口角炎、舌炎、眼炎、肛門炎、成長の停止など
過剰症
 特になし
 生体内でエネルギーを作り出す反応に関与します。生命のエネルギーの通貨と言われるATPを生産する時に関与するFADの元です。
 過剰症は特にありませんが、副作用として食欲不振、悪心、下痢などがあります。治療薬としては、リボフラビン欠乏症以外に、脂質代謝改善薬としても使用されます。
 リボフラビンは、十二指腸から小腸上部で吸収するために、食物と一緒に、この部分をゆっくりと通すのが効率がよくて、食後に摂るのが効率的です。
 1日所要量は成人男性で1.3mg、成人女性で1.1mgです。医薬品としては1日2〜30mg程度です。

3.ビタミンB(ピリドキシン)
欠乏症
 幼児で、けいれん。成人で貧血をおこす事がある
過剰症
 大容量で進行性感覚性失調などをおこすことがあります
 ピリドキシンは血液や皮膚代謝で補酵素としてはたらきますが、欠乏症は稀にしかおこりません。殆んどの食物に含まれていることと、腸内細菌が合成しているからです。
 但し、薬物やアルコール中毒などで、ピリドキシン欠乏が起き脂漏性皮膚炎、舌炎、口角炎などがおきることがあります。
 このピリドキシンは、普通の生活では欠乏症はないのですが、所要量は成人男性で2mg成人女性で1.6mgとされています。
 医薬品としても、ある種の結核治療薬がピリドキシン欠乏症を招きますので、この場合は100mg以上を要することがあります。

4.ビタミンB12(シアノコバラミン)
欠乏症
 神経障害、貧血
過剰症
 特になし
 シアノコバラミンの所要量は2.0μgとされていますが、一般的に1日の消失量は2〜5μgです。シアノコバラミンの殆んどは肝臓に貯蔵されていますが、この貯蔵量は一般に3〜5年分ですので、欠乏症はおこりにくいビタミンですが、しかし、腸肝の循環が欠如している場合は、一年に満たない時間で欠乏します。
 シアノコバラミンが不足するのは、胃粘膜壁細胞の分泌物である内因子の分泌低下や、腸肝の循環が欠如しているなど病的な場合です。
 シアノコバラミンは動物性蛋白食品を摂取すると、容易に摂取できます。しかし、徹底的菜食主義の人や、徹底的菜食主義の人から授乳を受けている人、慢性アルコール中毒の人は摂取不足となることがあります。
 シアノコバラミン欠乏での神経症状は、初期では、軽度・中程度の反射消失や筋力低下がおきますが、重症となると、下肢の固有知覚や振動覚が高度に無くなり、運動失調をおこします。上肢は下肢よりも欠乏症はひどいのですが、上肢の症状は人によってさまざまで一定しません。また、抑うつ、せん盲、錯乱など中枢神経障害も見られることがあります。
 シアノコバラミンの欠乏症は、重症になると不可逆的な障害となります、後からシアノコバラミンを補給しても神経症状は回復しませんので早期の発見が重要となります。
 治療薬としては、末梢神経障害治療薬として使用されます。

5.ビタミンC(アスコルビン酸)
欠乏症
 壊血病、歯・骨の発育不良、疲労、貧血
過剰症
 下痢、尿道結石、鉄過剰
 アスコルビン酸はコラーゲン合成に必須の成分で、体の結合組織や類骨組織や象牙質の形成をします。建築物にたとえるなら、セメントや釘、接着剤のような物を合成するものです。
壊血病というのは結合組織や骨で、細胞間のセメント質形成に障害が起こり、それが原因で毛細血管が弱り出血するものです。
 コラーゲンは体のあらゆる組織を作るセメントのような役割をしていて、コラーゲン形成に必須であるアスコルビン酸は重要なビタミンといえます。
 また、ビタミンCは鉄の吸収を促進します。
 アスコルビン酸には、風邪の予防や、動脈硬化を防ぐという説もあります。これは、ビタミンCの免疫力増強、酸化防止(還元性)を評価しているもので、よくマスコミに登場しますが、これは通説ではありません。
 過剰症というものは、ほとんど無いのですが、あまり大量に取ると尿が酸性化して尿道結石などができることがあります。
ろばさんの服薬指導