ビタミン剤総説
1.ビタミン剤総説
 ビタミンの定義は「微量でヒトそのほかの動物の栄養を支配し、生体内の代謝、生理機能に対し触媒的に作用するが、生体内で合成されないため、外界より摂取しなければならない有機化合物」というのが一般的なものです。
 もっとも、発見当初は生体内で合成できないとおもわれていたのが、後になって生体内でも合成されていることが分かったものもありますが、おおむねこの定義が一般的になっています。
 ビタミンの名前の由来は1911年鈴木博士が米ぬかからオリザニン(現在はチアミンと呼ばれています)を抽出したのが史上初のビタミンの抽出となるのですが、これに翌年ポーランドの学者Funkがこのような生理的活性のある物質をVitamineと命名しました。オリザニンがアミン類であったためamineとvit(生命)をくっつけた造語なのですが、後にビタミンでもアミン系でない物質も発見され、スペルからeが取れて、Vitaminとなりました。
 ビタミン剤は原則として、ビタミン欠乏症やビタミン依存症に使用されます。ビタミン欠乏症というのは分かりやすいとおもわれますが、ビタミン依存症は分かりにくい概念ですが、何らかの病気や体質のためビタミンがなければ正常な代謝がおこなわれない状態と考えてください。
 ビタミンは原則として、食物から摂取するのが原則なのですが、極度の疲労などで一時的に欠乏に至った場合に使用します。
 ビタミンにも過剰症や副作用はあります。食物から摂取する場合は、どんなに大食してもビタミン過剰症にいたるほど摂取できないものですが、薬品の場合、取る気になったら多量摂取も可能なので注意するべきです。
 水溶性ビタミンの場合過剰なものは、すぐに尿から排泄されて、体内には、あまり貯蔵されていないものなのですが、脂溶性の物は体内に蓄積され、容易に過剰症が発現します。

2.ドリンク剤
  市販のビタミンのドリンク剤には大きく分けて2通りのものがあります。
  1.カフェインや興奮剤の入っている物
  2.カフェインや興奮剤の入っていない物

 カフェインや興奮剤が入っていない物の用途としては、疲れた後や、発熱性疾患などで、寝る前に飲みます。熱があって消耗して、寝こんでいる人にビタミンを補給するなどの目的で使用されます。
 消耗したビタミンを補給して、休む。これが原則的なビタミン剤の使用方法です。
 カフェインや興奮剤の入った物を使用するのは、一時的にはいいのですが、本来は、体を休めるべき状態にあるのにビタミンの大量使用や興奮剤で、本来の疲労を覆い隠す事になり、実際は体にダメージを与える事になるということを考えるべきです。
 
3.脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
脂溶性ビタミン
 ビタミンA(レチノール、デハイドロレチノール)
 ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)
 ビタミンE(トコフェロール)
 ビタミンK(フィトナジオン)
 ビタミンK(メナテトレノン)
 
水溶性ビタミン
 ビタミンB(チアミン)
 ビタミンB(リボフラビン)
 ビタミンB(ピリドキシン)
 ビタミンB12(シアノコバラミン)
 ニコチン酸、ニコチン酸アミド
 パントテン酸
 葉酸
 ビオチン
 コリン
 イノシトール
 ビタミンC

 一般的に水溶性ビタミンは過剰症はほとんど、おこりません。しかし、脂溶性ビタミンは過剰症や副作用が割と出ます。「ビタミンだから、いくら摂っても大丈夫。」ということは、ありません。
 ビタミン剤については、同じ物が医薬品と健康食品と両方に存在する事がありますが、内容成分としては同じものです。医薬品表示のものは、有効性が確認され、純度などの品質も医薬品としての基準を満たすもので、医薬品表示が許されたものです。
 医薬品の方は、ある基準以上の品質があるということです。健康食品の場合は、品質はメーカーによってまちまちです。
 ただ、悪質業者によって「医薬品と違い、食品だから大丈夫。」というのは間違いです、成分が同じものは医薬品であろうが食品であろうが基本的には同じです。販売に際しての許可条件の違いだけなのです。
 
 上に、水溶性ビタミンと、脂溶性ビタミンを記載しましたが、実際は、医薬品として販売されていないものや、昔は医薬品として広く使用されていたけれど、副作用が多くてあまり使用されなくなったものもありますし、治療薬として市場性がなくて製造が打ち切られた物もあります。これらのものは、このサイトでは、触れない事もあります。一般的に欠乏症は稀であったり、事実上入手できなかったりするからです。入手できない物については、解説は意味が少ないとおもうからです。
 
ろばさんの服薬指導