呼吸器治療薬
1.呼吸器治療薬
 呼吸器系は、気管支および、肺の疾患をいいます。具体的に使用されるのは、感染症が原因の場合は抗生物質などの感染症治療薬です。また、炎症や発熱がある場合には解熱消炎鎮痛薬を使い、あとは、具体的症状に応じて鎮咳薬や去痰剤などを使用します。
 もっとも身近な病気としては風邪症候群があります。風邪症候群と一口に言っても、感染症の無い場合や感染症があったとしても、そのときにより感染した菌も違います。
 発熱、咳、鼻水などの風邪症状のあるものの総称ということになります。
 風邪症候群の治療方法は、原則として安静です。安静にしていて自然治癒を待つというのが基本的なスタンスです。
 しかし、発熱や激しい咳は患者の体力の消耗を招き、患者にとって負担となりますし、自然治癒を遅らせてしまいます。
 そこで、これらの症状を抑える為の医薬品を用います。咳が出れば咳止め。熱が出れば解熱薬という具合に具体的症状に対して、症状を抑える薬を使います。したがって、これらの薬は、あくまで症状を抑えるだけで、決して病気自体を治してているわけではないのです。これを対症療法といいます。
 対症療法は病気自体を治すものではないのですが、症状を軽くして、患者の負担を軽減して、自然治癒の時期を早めるという効果はあります。
 発熱がある場合や、粘度の高い炎症性の痰がでるなど感染症が疑われる場合は感染症治療薬が使用されますが。インフルエンザなどウイルスが原因の場合は抗生物質は無効です。さらに、常在菌が殺されることによりウイルスにとって生育しやすい環境になることもあります。
 もちろん、最初から細菌感染の場合には抗生物質を使用します。また、ウイルス感染は2〜3日で収束するのですが、ウイルスによって荒らされた細胞に別の細菌が感染する二次感染防止のために感染後2〜3日後から抗生物質を使用することがあります。
 
2.鎮咳薬
 咳は、気道の内側の刺激が求心性の神経を通り、延髄の咳中枢に伝わり、反射運動として起こります。しかし、咳が出るのは気道への刺激だけではありません。咳中枢まで刺激を伝達する神経は、胸膜、横隔膜、食堂、胃、腸、肝臓、腎臓、虫垂にも枝を伸ばしていますので、これらの部位での病変でも咳が出る事があります。咳がひどいと、嘔吐しそうになる事がありますが、これは、咳中枢と嘔吐中枢の位置が近いからですので胃腸病というわけでもありません。
 また、咳中枢は、大脳皮質の支配も受けますので、精神的な原因でもおこります。
 咳は気道内の異物を排出する生体防御反応ですので、原則として、むやみに止める必要はありません。特に、多量の痰をともなう咳は、無理に止めてはいけません。
 しかし、あまりひどい咳は、胸痛や助骨骨折、頭痛、睡眠障害となり、患者の負担となりますので、鎮咳が必要となります。以下、よく使われる医薬品を検討します。

リン酸コデイン
 中枢神経抑制剤で、強力な鎮咳作用があります。しかし、中枢神経抑制剤なので、眠気、めまいなどの副作用があります。
 また、この薬品は、強力な下痢止めとして使用されますので、便秘します。また、排尿困難が起きる事があります。
 リン酸コデインは、容量は一般的に一回量10〜20mgですが、医療機関では、100倍散として処方されますので、リン酸コデイン100倍散として、一回1〜2gで、1日の最大量は6gです。頓服として、咳のひどい時のみに服用する場合と、毎食後などの用法で定期的に服用する場合があります。
 この薬品は、気管支の分泌も妨げますので、喘息の咳は症状が悪化する事があり、気管支喘息の発作中の使用は禁忌となっています。

臭化水素酸デキストロメトルファン
 咳中枢の咳反射の遮断作用のある薬品です。麻薬系のリン酸コデインと違い、鎮痛作用や身体的依存はありませんが、咳中枢の抑制効果はリン酸コデインと同等です。
 副作用としては、めまい、口渇、眠気、食欲不振、軽度の動悸、便秘があり、リン酸コデインに似た副作用が出る事がありますが頻度は高くありません。
 一般売薬、医療機関ともに、よく処方されています。(商品名:メジコン、シーサール、ナイコチン、メゼックなど)
 商品によって、錠剤、散剤、シロップ剤などがありますが、一回の容量は臭化水素酸デキストロメトルファンとして15〜30mgで1日1〜4回です。

ノスカピン
 ノスカピンは、リン酸コデインよりも鎮咳作用が弱く、その他の中枢抑制作用も弱いのですが、その分副作用も弱いです。副作用は上述2種と同じく、眠気、頭痛、食欲不振、便秘などです。
 鎮咳効果、副作用ともに弱いのですが、鎮咳効果の即効性と呼吸中枢刺激作用、軽度の気管支拡張作用があり、歴史も古い薬なので、医療機関はもとより、市販の総合感冒薬で広く配合されています。
 1回10〜30mg、1日3〜4回。

3.去痰剤
 呼吸器の気道の内側の表面には、上皮細胞があり、この上皮細胞には繊毛が生えていて、気道内の表面はブラシのようになっています。この繊毛は、外から入ってきた、塵や細菌などの異物を外に排出するために、気管支から口の方向に物が移動するように運動します。
 また、気道の表面には表皮細胞が並んでいるのですが、ところどころに杯細胞というものもあり、この杯細胞は粘液を分泌しています。
 杯細胞から出た粘液で気道に侵入した異物をからめて、これを繊毛で集めて痰を形成します。
 しかし、粘液の割に異物が多い場合や、乾燥している場合、痰の粘度が上がり排出困難となります。痰が排出困難な場合は呼吸困難になることがありますので、去痰剤によって気道粘膜の分泌を促進して、痰の粘度を下げて、排出を容易にします。

サポニン類
 セネガ、オンジ、キキョウなどのサポニンを含む植物製剤が使用されますがが、主にシロップ剤の成分となっています。胃腸粘膜を刺激して、反射的に気道内の分泌も促進します。また、繊毛の運動も促進します。
 副作用として、嘔気、食欲不振などがあります。

塩酸ブロムヘキシン(ビソルボン)
 気道分泌を増加させます。副作用は胃腸障害、頭痛などですが、注射でなければ副作用は極めて少ないようにおもいます(私見)。
 1回4mg、1日3回。

塩酸アンブロキソール(ムコソルバン)
 これは、肺の分泌を促進します。副作用は胃部不快感などです。1回15mg1日3回。
ろばさんの服薬指導