抗ヒスタミン剤(H1)
1.ヒスタミン総説
 生体内では、神経系や内分泌系によって支配されています。しかし、神経伝達物質やホルモン以外にも、少量で広範囲に作用を及ぼす物質があることが知られています。これをオータコイドといいます。
 オータコイドに分類されるものは、ヒスタミン、セロトニン、アンジオテンシン、ブラジキニン、プロスタグランディンがあります。ここでは、ヒスタミンの作用の一部について書きます。

 ヒスタミンは、肥満細胞、好塩基性白血球に貯蔵されています。そして、抗原抗体反応、アレルギー反応のときや外傷、熱傷のとき、毒物、薬物の侵入時に遊離されます。
 そして、ヒスタミンは、毛細血管の透過性を亢進させて炎症反応を起こし、気管支や腸平滑筋を収縮させます。
 ヒスタミンの受容体には、H1、H2、H3があるのですがH2レセプターは胃にあって、ヒスタミンの刺激で胃酸を分泌させるのですが、ここでは、アレルギー反応に対して述べますのでH1のみを問題にします。

 まず、体外から異物が侵入した時に、免疫物質であるIgEが異物の情報を捉えます。そして、IgEは肥満細胞に付着します。肥満細胞に付着しているIgEがが再びその異物に触れると、肥満細胞はヒスタミンなどの媒介物質(メディエター)を遊離します。
 メディエターは、免疫作用に必要な他の細胞を呼んで来る作用や、ヒスタミンのように、免疫反応の手助けをする物質の総称です。

 これ自体は正常な免疫反応なのですが、何らかの原因で異常な免疫反応が起こることがあり、ヒスタミンの活動をおさえなければならない場合が生じます。

2.抗ヒスタミン剤
 抗ヒスタミン剤は、ヒスタミンがヒスタミンの受容体と反応するのを妨害してアレルギー反応を抑えようとするものです。
 初期の抗ヒスタミン剤は、ヒスタミンを抑えるだけではなく、中枢神経抑制作用と、抗コリン作用(副交感神経抑制作用)がありました。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン剤としてアレルギーに使用されるだけではなく、嘔吐中枢の抑制作用もあり、乗り物酔いの薬として使用されていました。
 だから、中身は同じジフェンビラミンなのですが、蕁麻疹などの治療薬としてはレスタミンとして発売され、乗り物酔いの薬としてはトラベルミンの商品名で発売されました。
 しかし、眠いという副作用は同じです、しかし、ヒドロキシジン(アタラックスP)のように、鎮静剤としての効能を持って発売されるものも出てきました。
 しかし、眠気という副作用は昼間に服用する薬品としては、かなり困るので中枢神経抑制作用を抑えることが課題となりました、そこでクロルフェニラミン(ポララミン)が中枢神経抑制作用の少ないものとして登場しましたが、それでも眠気はあり、自動車の運転や危険な作業などには支障があります。

 蕁麻疹や皮膚炎、鼻炎には抗ヒスタミン剤は使用されるのですが、喘息には使用されませんでした。それは、抗ヒスタミン剤の抗コリン作用によって気道粘液の分泌抑制があるからです。
 そこで、抗ヒスタミン剤の抗コリン作用を抑えるべく研究がなされました。
 抗ヒスタミン剤には、第一世代と第二世代に分類できますが、今まで述べてきたのは第一世代で、中枢作用が弱くなり、抗コリン作用が弱くなった物を第二世代と分類します。
 第二世代に分類されるのは、メキタジン(ニポラジン)、エピナスチン(アレジオン)、エメダスチン(レミカット)、エバスチン(エバステル)、セチリジン(ジルテック)などがあります。
 第二世代は、我が国では、抗アレルギー剤に分類されています。

3..抗アレルギー剤
 抗アレルギー剤は、上述の第二世代抗ヒスタミン剤と、肥満細胞から分泌されるヒスタミン以外の免疫反応に関与する物質(メディエター)、などを抑制する物質をいいます。第二世代抗ヒスタミン剤については、上述しましたので、そのほかの物について書きます。
 トラニラスト(リザベン)は、肥満細胞からメディエターが遊離するのを防ぎます。(フマル酸ケトチフェン)ザジテンは、メディエターの遊離抑制に加え好酸球活性化抑制、抗ヒスタミン作用もあります。
 
 プロスタグランディンは、体内の粘膜上で不飽和脂肪酸から合成されるもので、体内では、炎症や気管支収縮などのアレルギー反応に関与しています。
 ロイコトリエン、トロンボキサンなどもその範疇に入ります。
 トロンボキサン抑制剤にはセラトダスト(ブロニカ)、ロイコトリエン抑制剤にはプランルカスト水和物(オノン)などがあり、気管支喘息などに使用されます。
ろばさんの服薬指導