皮膚科外用薬概論
1.皮膚科外用薬について
 皮膚科外用薬では、主に副腎ホルモン剤と抗生物質が使用され、それ以外に、白癬などの特殊な病気に対する治療薬が加わります。
 皮膚科に於いて一番大切な事は病名の確定なのです。たとえば、副腎ホルモン剤というのは人間の免疫機能を抑えて、炎症や過剰な免疫反応を強力に抑える薬なのですが、もし感染症に副腎ホルモンを使用したならば、免疫機能は抑えられ感染はより広範、深在化して悪化し、難治性の病気になってしまいます。
 そんな事は無いと思われるかもしれませんが、皮膚の症状と言う物は、外見では分かりにくい物なのです。典型的な症状だと、分かるかもしれませんが、多くは初期すぎたり、時間が経って典型な物から崩れていたりします。本当は皮膚の一部を切り取り顕微鏡で原因を特定しなければ正確な診断は下せません。
 普通は治癒するべき期間を過ぎても治療効果があがらない場合は、病名の誤りも考えなくてはならなくなります。
 皮膚の炎症や、湿疹や発赤などでかゆみのある物は、副腎ホルモンを使います。
 感染症の場合は、相手の菌種によって抗生物質を使い分けます。相手が真菌の場合は抗真菌剤を使用します。ウイルスや真菌の感染症に一般の抗生物質を使用してはいけません。
 抗生物質は細菌に対して有効なので、ウイルスや真菌には全く無効です。そればかりか、ウイルスや真菌の増殖を助ける事になり悪化してしまいます。
 よく効能書きに「菌交代症」というのがありますが、簡単に言うと細菌もウイルスも真菌も同じ物をエサにしています。限られた体内のキャパシティーの食料をめぐって相争う関係にあります。
 真菌が抗生物質をその体内で作り他の菌をおとなしくさせたり、殺したりして食料争いに勝とうとします。このように、微生物同士の抑制の均衡があるのです。
 ここで、真菌のライバルの細菌が抗生物質で攻撃を受けて居なくなると、真菌の増殖を邪魔する物は何も無くなってしまいます。
 菌交代症という物は、単に細菌が居なくなって、そこには真菌しか居なくなったという意味ではありません。生育の邪魔をする物がなくなり、発病するに足りる位に増殖してしまうのです。
 だから、白癬菌(水虫、たむし)などの真菌や、帯状疱疹(ヘルペス)などに抗生物質を使用する事は絶対にしてはいけません。
 外用薬を使用して、症状が悪化した場合は(事前に医師にそうなる事を告げられていた場合は省く)すぐに使用を中止しなければなりません。
 外用薬の使用には、正確な診断が必要というのはこの事です。
2.剤形による使い分け
 剤形は、有効成分が、その患部に適切に有効になるように選択しなくてはなりません。
 患部の状態によって、最も有効性を発揮できる剤形があるのです。

○粉末
 粉末の物は、あせも等の軽微な症状に使われる物で、抗炎症剤以外にも、抗生物質、抗真菌剤にも粉末の物がある。

○軟膏
 一般的には、油脂性の基材(有効成分を混ぜる原料)を使用してています。親水性の物もあります。患部が乾燥していても、湿潤していても使用できます。

○クリーム
 水と油を界面活性剤に溶かして出来た物で、本当は親水軟膏と、吸水軟膏に分けられますが、この剤形は複数の薬剤を配合した場合、それぞれの成分の吸収が良くなるというメリットがあります。湿潤した患部に使用すると、湿潤物も吸収されてしまいますので、湿潤した患部に使用してはいけません。

○ローション
 ローションは液体の物をいいますが、これは、乾燥した患部に使用します。湿潤した患部に使用してはいけません。
ろばさんの服薬指導