概論3.剤形について
1.剤形とは
 
 医薬品の剤形とは、粉末、錠剤、カプセル、液体などの、医薬品の形をいいます。
ある医薬品の剤形の決定は、化学的に安定した形や治療上有利な形として決定されています。
 
 最近はクォリティーオブライフという考え方が広まり、それも考慮して決定されます。
 クォリティーオブライフとは、「生活の質」という直訳なのですが、治療中、治療後の患者の生活の質をより快適に、負担を少なく、苦痛を少なくする方法を選択するという考え方です。
 1日3回薬を飲むというよりは、1日1回にする、もしくは数日に一回、又は1週間に一回の服用
と改善されて行きますし。剤形もより服用されやすい形となります。最近は、今まで飲み薬しか無かった物が貼り薬で登場したりしています。
 品目数は少ないのですが、マイクロカプセルを利用して、一回皮下に注射すると、毎日決まった数のマイクロカプセルが割れて薬が溶け出し、1ヶ月に渡って薬が一定量体内に放出される物もあります。
 注射の例はまだまだ希少なのですが、貼り薬はいろいろと工夫されて出回っています、一枚貼ると24時間皮膚から吸収されたり、数日間持つものもあります。
 また、水を飲まなくていい、液体で1回分ずつスティクになっている物もあります。
 水に溶かすと炭酸ソーダのようになる物も出ています。
 小児用では動物の形をしてお菓子のような形状になっていると言う事も考えられますが、このタイプは国内では認められにくいので、わが国で登場するのは、まだまだ先の事でしょう。
.剤形を決定するもの

 薬の剤形を決定する要素としては、
  1. 化学的に安定していてる。
  2. 生物学的、化学的に吸収されやすい。
  3. 服用のし易さ。
  4. 治療効果の良さ。
という事になります。

 1.について、化学物質の室温での安定した形状は、固体の物も、液体やオイル状の物までいろいろありますし、固体にすると結晶して安定と言うものもあります。

 2.については、物質が酸性であるとか、アルカリ性であるとかによって、吸収が変わってきます

 アルカリ性の物で胃酸で水溶性になり溶け出すが、アルカリ性下では、固体のままで溶けないという場合もあります。その場合、吸収されやすいように化学的に物性を変える事もあります、(カルボキシル基をつけて水溶性を高める等)。
 *ここで、水溶性という事を言いましたが、これは錠剤、粉末が水に溶けやすいようにすると言う事で、一般に吸収され易さは脂溶性の方が上です。

3.服用のし易さというのは、粉末のままだと刺激臭があって服用されにくい、又は、規定の量で錠剤にすると大きすぎるとか、オイル状のものはべたべたするとか言う物で、カプセルに入れたり
錠剤の大きさを再考したりします。

4.については、炭酸のような散剤は、錠剤よりも、粉末の方が目的とするところで早く効果を発揮すると言う場合などです。
3.散剤、細粒剤、顆粒剤

 いわゆる、粉薬です、もちろん、

「細粒剤とは、32号(500μm)ふるいを通過して、150号(105μm)ふるいに残留する物は全量の75%以上である」

というような定義はあるのですが、ここでは詳しくは触れません

散剤<細粒剤<顆粒剤

という順番に、散剤が一番粒が小さく、細粒、顆粒と粒が大きくなるとだけ覚えておいてください。
顆粒は細粒とかを固めた物もありますが、原末のままで結晶が大きい場合もあります。

 散薬は胃薬でよく使われています、胃に到達した時、殆ど溶けている状態になっていて、すぐに作用しやすくなっています。
 散薬が飲み難い場合、錠剤でもいいのですが、溶け出すまでに時間がかかるので、その中間で散薬より服用しやすく、錠剤より早く溶けるという顆粒剤にしているものもあります。
 今は腸溶性の持続的吸収性の解熱鎮痛薬が多いのですが、昔は解熱鎮痛薬は胃で吸収される物が多かったので顆粒剤となっているものが多かったです。
4.錠剤
 
錠剤とは、医薬品を一定の形に圧縮して作ったものです。
有効成分の粉末を水で溶いて型に入れて乾燥させるのが簡単な製造方法ですが、今では粉末に圧力をかけて、圧縮形成している場合が主です。
 錠剤の全てが成分というわけではなく、1錠中10mgとかの量でしたら、殆ど耳掻きですくうにも困難な量で、通常の呼吸でも飛んでしまいます。
 そこで、賦形剤と言われる乳糖などの生理的に不活性な(体の中では何の作用も無い)物質を混ぜて体積を大きくして、適切な大きさの錠剤とします。
錠剤には、いくつかの層に分かれていて、単一成分や複数成分を別々に固めている物もあります
 層によって溶け出す時間が違う場合もあります。
 このような場合、錠剤を粉砕、分割すると、意図された溶解時間と異なる時間に成分が溶け出したりしますので、割線があって、分割する事を予定されている場合を除き、安易に分割、粉砕はできないこともあります。
 5.カプセル剤
 
カプセル剤とは、医薬品を液状、粉末状などの物をカプセルに充填したもの、又は、カプセル基剤で被包形成したものです。
 カプセルにする場合は、医薬品に不快臭があったり、刺激があって粉末のまま服用すると食道を傷める場合などがあります。
 したがって、カプセルを外して服用する事はお勧めしません。

 又、室温でオイル状の物質の場合、水薬としては服用しにくく、ゼラチンでくるんでカプセルにしている場合もあります。
 粉末などが入っている硬カプセルと、ゼラチンにグリセリン、ソルビトールなどを加えて塑性を持たした物にオイル状の物などを充填した軟カプセルがありますが、いずれもカプセル剤は湿度に弱いので湿気に注意して保管しなくてはなりません。
6.坐薬
 
坐薬とは、医薬品を基剤に均一に混和して一定の形状に成型して、肛門に挿入する薬です。(膣に挿入する膣坐薬もあります)

 坐薬は体温で溶ける物と分泌物で溶けるものがあります。
 痔に使用する物のように局所で作用するものもありますが、直腸の粘膜から吸収され静脈にすぐに成分を移行させる全身作用用の坐薬もあります。

 坐薬は内服薬よりも早く静脈血に入り、早く効果を現します。又、肛門の静脈を経由する為、胃の障害が少なくなりますし、経口での服用が困難な場合にも使用されます。
 坐薬は、1つ1つ包装されていますので、包装の中身のみを挿入してください。又、体温で溶けるものが多いので、保管は冷蔵庫等にして下さい。
7.軟膏剤
 
 軟膏剤は、半固形状の皮膚に塗布する薬剤です。軟膏剤には親油性、親水性の物があります。
親油性の物は皮膚の保護という面ではいいのですが、皮膚分泌物の多い場合は分泌物の吸収も悪く、水での洗浄も困難です、皮膚からの成分吸収も悪くなります。
 抗生物質が入った外傷用の軟膏によく見られます。
 親水性の物は乾燥型の皮膚疾患に適しています。
 水虫の場合、びらん性の物は軟膏を使用します、しかし、乾燥してくるとクリーム剤か、折角乾燥しているので液体の物を使用します。
 クリーム剤は水溶性軟膏の軟らかい物と言う事になります。脂肪分の分泌する疾患ではゲルと言われる、すり込むと液体に近くなるものを用いたりします。
ろばさんの服薬指導