概論1.薬とは何か |
これについては、何か薬学概論の本でも参考にしようと思いましたが、このサイトでは私独自に起草したいと思います。
私が薬学部に入学して初めての講義で聴いた事は
「薬は体にとって、異物であり毒である」
という言葉です。毒であるのが原則なのです。
病気での害悪>薬の薬効
体におきている病気による悪害と、薬の毒性とを比較して、薬の悪害よりも病気の悪害の方が上回ると考えられる場合のみ薬によって治療するのが原則なのです。
もっというと、病気の治療は自然治癒が原則で、薬はその手助けをするものにすぎません。
したがって、薬は体に不都合が無いのにむやみに服用するのは慎まなくてはなりません。
もちろん、病気予防の為に服用する場合もありすが、それは、その人の体に、ある程度重大な病気になる事が予想できる場合に限られると思います。
もちろん、今の薬は安全性が高く、かなり長期間服用しても副作用は出にくいのですが、基本的には病気や薬に向かい合う態度としては、なぜ病気になっているのか、体にとって何が問題で、どうすれば問題解決につながるのかを考えてみたいと思うのです。
薬は化学物質であり、体にとって、異物である事を常々心にとめておく必要があると思います。
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体外の異物であるということでは、薬以外に食品もそうなのですが、食品は日々の活動のエネルギーを作り出したり、体を構成する成分を作り出したりと、生体の維持には必要不可欠なものなのです。
食品と薬品をわけるとすれば、体内に入った時の作用の大きさが格段に違うと言う事になります。薬品は極めて少ない量で体に大きく作用します。
医薬品は、治療への有効性が確認され、安全性が確認され、医薬品としての認可が必要になりますし品質管理も食品より厳密になります。
ところで、世の中には健康食品と称されるものがあります。そして、薬品と健康食品と同じ品目のものがあります。例えば、ビタミンC 200mgという商品を例に取ると、中身は同じなのです。
この場合、医薬品であるものは医薬品としての水準を満たす品質で医薬品として認可されたものをいい、そうでないものが食品ということになります。
食品でも、会社によっては医薬品の物以上の品質管理されているものもありますが、医薬品ほど厳しく作る必要は無いので会社によってまちまちとなります。
ほとんど医薬品と同じなのに一般のスーパー、コンビニでの販売の方が有利なので敢えて薬品の許可を受けていないものもあり、単に医薬品の認可を得ているかいないかだけの場合もあります。
ある種の業者がよく「医薬品ではなく食品だから安全。」ということを言うことがありますが、明らかに誤りです。問題はどういう成分がどれだけ入っているかなのです。
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一つの物質といっても体の中では、いろいろな器官でいろいろな作用をしています。その作用には病気を治すのに役立つ作用もありますが、毒性を示す作用もあります。
しかし、物質の中ではどんな量でも必ず毒になる物もあります。そのような物は医薬品にはなりませんし毒物として指定され決して摂取してはなりません。
医薬品の場合、その服用量によって
無効な量<有効量<毒性を示す量<致死量
という図式になります。
有効量で最大限の量を極量といい、毒性を示し始める量を中毒量といいます。
そして、有効量の最下限と毒性を示す最下量との差が少ない物は毒薬と言われます。
又、作用の激しい医薬品には劇薬の指定がなされます。
したがって、医薬品を勝手に大量に服用すると、原則として、毒性があると考えてください。勿論、上の図式は食品にもあてはまるのですが、食品で毒性を示す量というのは、普通では考えられない程の大量となりますので、通常は考えられません。
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前述した通り、医薬品は体内のいろいろな所に拡散します、そして、作用して欲しい臓器以外でもいろいな働きをします。
服薬量を指示された量以上に服用する事は、今まで作用が表面化していなかった臓器での作用も表面化しますし、それが毒性であった場合でも、今までの量は許容量だったのが、それを超えてしまう事になります。これは、量による副作用となります。
しかし、通常量でも副作用はあるのです。
主作用=その病気を治療する為の、目的とする作用
副作用=意図した作用以外の作用
という事となります。
例えば、ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン剤として、蕁麻疹とかにも効きますが、中枢神経への作用から乗り物酔いの薬としても利用されます。
蕁麻疹の為に飲む場合、乗り物酔いに効くというのは副作用になりますし、乗り物酔いの薬として飲む場合蕁麻疹に効くというのは副作用という事になります。ちなみに、この薬は眠くなるという副作用もあります。
副作用とは、ある病気を治療する上で、意図した作用以外の作用を言うのです。薬と言うものは、体内でいろいろな場所でいろいろな作用をしているのです。その意味で何が副作用かというのはものの見方の違いという事になります。
もう一つ例を上げると、アスピリンという物質は、視床下部に作用して、熱ざましとなりますが、それ以外にも、炎症に関係のあるプロスタグランディンの合成を阻害して、炎症を抑えますし、腎尿細管で尿酸の再吸収を阻害したりします。
最近は、解熱鎮痛薬以外に、心臓疾患予防の為の血栓溶解剤としても用いられるようになりました。
海外ではリウマチにも使用されています。
アスピリンのこういった作用はプロスタグランディンの合成阻害作用による物なのですが、プロスタグランディンは体の損傷の修復に重要な働きをしていますので、胃粘膜などが損傷した場合修復が遅れてしまい、胃炎、潰瘍等が出てくる事があるのです。
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