2.晩婚化の理由
序論
 晩婚化の理由は、前章1.で、概略を述べましたが、ここでは、もう少し詳説します。私は、晩婚化の原因を結婚への価値観の変化であると結論づけましたが、もちろん、それだけが原因ではないのです。それをいろいろな角度から検証してみます。

生物学的背景
 昭和50年ごろは、ほとんどの人が20代で結婚してしまい、女性にあっては、25歳までに結婚という「クリスマスケーキ」という単語がありました。理由としては、平均余命が今より短く、男性は定年の55歳までに子育てを終わっていなくてはならず。女性も当時の医学レベルでは、30歳以上での出産は高齢出産とされ危険をともなうものだったからです。
 しかし、現在は医学の発達とともに、30代の出産も危険なものとはされず、出産を希望する女性に時間的余裕ができました。一方男性も、定年が60歳〜65歳となり、こちらも時間的余裕ができてきました。
 したがって、男女共に、子供を希望する場合、人生設計のタイムリミットであせるまでの時間が出てきたと言えるのでしょう。

社会的背景
 女性の高学歴化と就業率というのも影響しています。しかし、これは先述したように女性の高学歴と結婚時期は関連が少ないのです。
 しかし、意識としては、昔は「女性は高校か短大を出て、数年腰掛で会社に勤め、25歳までに寿退社。」という社会通念が存在していました。
 しかし、男女平等の概念の定着と、仕事を続けたい女性が働きながら子育てをするということが定着するようになり、女性の就職は「腰掛」ではなくなりました。
 仕事を続けると言う事と結婚とは関係がなくなっているのですが、実際は、「女は家で家庭を守るもの」と言う意識は伝統的に特に男性の方に存在し「結婚か仕事か」という選択を迫られるケースもあり、これが結婚の障害になることもあるのです。
 一方、結婚後も仕事を続けると考えていても、育児休暇や育児施設の不備から、結婚後の生活設計が成り立たずに結婚を断念というケースもあると考えられます。

経済的背景
 男女雇用機会平等法などの定着で、男女の賃金格差が少なくなってきているのと、親元の経済力が一般的に豊かになってきているという事情があります。
 自分の経済力が不十分であっても、未成年と同様に親元で生活して、住居と食事は確保されるわけですし、飯代は家に入れるとしても、最悪の場合、掃除、洗濯、食事の用意を親がしている場合もあり。
 それが女性だと、結婚すれば、自分が掃除、洗濯、食事の用意をしなくてはならず、結婚してもデメリットばかりという事になりかねないのです。
 また、そうしたパラサイトシングルという状態を親元や社会が容認するようになったともいえるのでしょう。
 他方、かつてのように、男性の経済力に頼らなくても、自立できる経済環境になったというのも原因のひとつです。

生活経費の上昇
 バブル期から考えると、土地の価格は下がったのですが、住居にかける費用は、収入の3割までといわれますが、家庭をもって、子供ができるということを考えると、20代の人の収入では、収入の3割では収まらなくなり、生活は独身時代に比べて経済的に苦しくなります。これは、共稼ぎ、専業主婦の世帯ともにおなじで、独身時代よりも苦しくなります。
 さらに、子供ができたとき、将来の教育費も考えなくてはならず、昭和50年代では、高校、大学ともに、年間学費が30万程度だったのに、国の学校や大学への補助が少なくなり、大学では年学費が文科系で100万、理系では150万程度を見込まなくてはならなくなりました。これは、最低限の金額で、実際は、この倍になる場合もあります。
 昔は、学費は年収の1割程度だったものが、今では、年収の半分以上だったりします。これを新生児のときから積み立てていっても、生活が成り立たないという計算もあります。
 さらに、今後は高齢化社会で、介護保険や高齢者への経費なども考えると、もう計算が成り立ちません。したがって、結婚できる経済環境になるまで時間がかかるという背景もあります。

地域コミュニティの崩壊
 昔は、地域にお見合いおばさんが存在して、お見合いを成立させたということは、先述しました。しかし、お見合いおばさんが活躍できた背景には、地域コミュニティーがあったからです。
 「お見合いおばさん」(おじさんの場合もあり)の成婚率の高さの原因は、その情報力にあったのです、地域にしろ、親戚の有力者にしろ、男性、女性両方の両親がどんな人か知っていますし。場合によっては、お見合いする本人を子供の頃から知っていたりしました。
 その上で、この人とこの人は、育った環境や家の釣りあい、本人同士の釣りあい、相性も合うのではという事を考えてお見合いをセットしていました。
 また、当人同士も、地域コミュニティーや親戚の圧力や、カップリングの妥当性を分かっていましたから、成婚率は高かったのです。
 しかし、現在は地域コミュニティーは崩壊し、親戚同士のつながりも希薄化したので、旧来のお見合いは成立しにくくなりました。

結婚観の相対化
 結婚というものの価値感が変化してきたということは先述しました。「なぜ結婚しなくてはならないか。」という疑問に説得力ある答えが見出せない場合もあります。
 「愛せる人がいたら結婚するかもしれないけれども、そういう人がいなかったら敢えて結婚する必要はない。」という人も増えてきました。結婚制度については、次の章で詳述しますのでここでは除きます。
 結婚制度は、子供を残す上で、まだまだ有用な制度なのですが、子供を作らなければならないという命題さえ崩れています。子供を作る理由に「お墓を守る」とか「老後の世話をしてもらう」という伝統的理由や打算的理由がありますが、「子供はあてにならない。」世の中でもあり、これも崩壊しています。
 メリットがあるから結婚するという判断方法が正しいとはいえないのですが、人生での必須事項ではなくなったようです。


ろばさんの部屋 > 結婚相談所なんてこわくない > 結婚相談所概説  

CoQ10バナー