倉木麻衣ツアー2005 LIKE A FUSE OF LOVE
ツアーレポート(2)

                               

曲の質量

今回のツアーでは、序盤には「Time after time」に質量を感じなかった。
それは、「明日へ架ける橋」でも感じていた。

もちろん、前回のツアーで、オープニングやアンコール後の最初の曲として、
オーディエンスの心を掴むために歌ったのとは違うだろう。

これらの曲は「歌って風のように流れてきますよね。」
「その時その時の情景や思いでを重ねて聴いていただければ、
私は嬉しいです。」という「馴染みの歌」として歌われた。

初日に定番曲が雑然としていて、
ライブの流れの中で、扱いの難しさを思ったが、
位置づけとしては、他といったん離して、
「思い出の曲」のコーナーとするしかなかったのかもしれない。

そうであるなら、感動の源泉はオーディエンスの心に任せるので、
倉木麻衣としては、その一曲の価値を、
その場で作ることはしなかったのであろう。

しかし、九州以降は、「Time after time」「明日へ架ける橋」も、
1曲1曲が質量をもって感じられた。
オーディエンスの思い出と重ねるだけでなく、
それ以上の価値を、その場で持つようになった。

倉木麻衣のオーディエンスへの思いは、
どうしても1曲1曲に価値を持たさざるを得なかったのだ。

ただ、当初の考えとして、
基本的には「FUSE OF LOVE」の各曲とのバランスを考えていたように思う。

「FUSE OF LOVE」への私の評価は高くなく、
それをメインにするライブには、正直、少し不安があった、
しかし、ライブではその不安はなく、かなり楽しめた。

賛否両論の「Love,needing」なども、なら公演での歌だったら、
かなり売れたのではないかと思う。

「Growing of my heart」をライブとCDで比較すると、
やはり、音圧というものは大きな要素であると思うのだが、
それ以上に、倉木麻衣の一期一会の熱唱という部分は大きいと思う。

大阪城ホール、日本武道館ライブ

鳴門公演が終わると、もう大阪城ホールと日本武道館のライブしかない。
ツアー日程が発表されたときから、わかっていたことだけれど、
やはり16公演というのは短い。

ただ、大阪城ホール、日本武道館という会場選択は、
倉木麻衣にとって大きな意味があったのだが、それは後述する。

大阪城ホール、武道館1日目は、チケット完売とはいかなかったが、
十分に席は埋まっていた。
これくらいのホールになると、熱烈なファン以外でも入場しており、
席によって温度差があったのは否めないが、
それでも、快適なライブになった。

やはり、倉木麻衣と多数のオーディエンスの協調ということで、
ライブは素晴らしいものになった。

最終日の日本武道館2日目は、会場全体が熱を帯び、
倉木麻衣のパフォーマンスも最高であった。

Stay by my side

この曲は、ツアー途中、セットリストから外れ、
武道館2公演のダブルアンコールで歌われた。
「どんな向かい風があっても、いつも一緒にいてね。」
という倉木麻衣からファンへの想いがこもった珠玉の一曲である。

どんなMCよりも、この1曲が全てを語るだろう。

おかえりなさい

最終公演の直後、舞台袖で収録された倉木麻衣からのメッセージが、
ファンクラブ専用サイトで流れた。

やはり、倉木麻衣は不安を抱えていたのだった。

「風のららら」以降10ヶ月も新曲を出さず、
2004年は「明日へ架ける橋」の1枚しかシングル曲がリリースできなかった。
そして、次の「Love,needing」までも半年以上の時間を要した。

その間、ライブはするものの、
学業との両立など、苦しんでいたらしい。

そうした間、人々に忘れ去られていかないか、
元のように武道館などアリーナクラスのホールで歌えるのか、
現にCDのセールスも低迷していたし、
とても不安だったのだろう。

大阪城ホールで、ライブ中盤に倉木麻衣が目頭を熱くして
MCができないときがあった。

そのとき私は「どうして倉木麻衣は、こんなところで泣くのだろう。」
そう思っていた。

しかし、「大阪城ホールに帰って来ました。」と言った倉木麻衣には、
二度と大阪城ホールのような大きな舞台では
歌えないのではないかという不安があったのだろう。

不安のうちに立った大阪城ホールのステージで倉木麻衣が見たものは、
完売ではないが、ほぼ満席のオーディエンスの姿であった。

倉木麻衣は、オーディエンスの暖かさを感じると共に、
本当に、ここに帰ってきたと実感したのであろう。

それは、武道館でもそうだった。
武道館ファイナルの超満員のオーディエンスは、
本当に倉木麻衣が本格的アーティストとして復帰したことを
倉木麻衣自身が感じていたことだろう。

「こころ変わらず待っていてくれた。」という言葉が全てを語っていた。

私は、あまり倉木麻衣の力にはなれなかったかもしれないが、
このツアーの全公演に参加し、倉木麻衣を応援できて
本当に良かったと思う。

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