Wish You My Best〜Grow,Step by Step
                        ツアーレポート(2)

尼崎〜京都
 最初に断っておくが筆者は倉木麻衣の曲をじっくり聴いて感動したい方で、倉木麻衣には原則バラードを要求する立場である。また倉木麻衣に関しては外見や個性よりも歌を高く評価している。

 今回のライブツアーでは、少し位置づけに困ったというのは前に書いた。というのはFAIRY TALEや昨年秋のSpecialライブとセットリストなどがあまり変わらないとしたら、さすがにファンにも飽きられるであろう。長年のベテランで決まりきったものを繰り返し歌うというのは、古典落語などの伝統芸や民謡、クラシックではありえるが、倉木はまだそのような段階ではないだろう。

 尼崎のライブが今までと違うのは、ダンサーを採用して倉木が今はまっているというダンスを前面に出し、歌って踊れるライブを目指していたことであろう。曲も全体的にアップテンポにアレンジされている。
 倉木麻衣自身がダンスのみを披露する場面もあった。

 残念なところは、倉木麻衣が衣装替えするときに舞台を外す場面が多く、その間メンバーの演奏で時間を繋いだが、アップテンポな乗りを前面に打ち出したライブとしては途中で間があきすぎて失敗したと思う。
 もちろん、序盤のライブでは試行錯誤の部分が多くて仕方ないことだけれど、倉木が舞台にいない間はEXPERIENCEが乗りのいい曲を演奏して観衆のボルテージを維持する方がよかったと思う。
 衣装替えが多かった点は試行錯誤ということで仕方ないかもしれないが、初日のライブも聴衆にとっては唯一のライブであることを忘れないでほしい。

 倉木麻衣のダンスについては、賛否両論あるだろう。私は倉木麻衣の商品の本体は歌であるという立場からはダンス否定派である。
 もちろんライブの見せるという要素や聴衆へのアピールなどライブパフォーマンスからいうとダンスは必要であると言える。しかし、歌を評価するファンにとっては、歌以外のものは副次的なものであり歌に差し支えない範囲ですることだと考えている。

 ただ、この点では「息が切れて声が出ていないなどの支障」がなければダンスミュージックでは問題にならず、歌とダンスは相互に高めあうことがあり今回のライブではダンスを前面に出すというにしてはダンスは未熟なところがあったろうから、ダンスに関して肯定派も否定派も少し不満の残るところであろう。
 ただ、倉木麻衣の今までの軌跡から言うと成長の跡はあるし納得するべきであろう。なぜなら、ダンスの要素は今までのライブに対してプラスアルファの部分であり、加点法の思考からすると加点部分であるからだ。

 あとStand Upの前に聴衆と歌う部分が「na na na」から新バージョンになっていたが聴衆がStand Upと気付いていない者も多く、倉木サイドの説明不足だったろう。
 事前に「Stand Upの新バージョンです。みなさんも一緒に歌ってください。」と一言入れて、聴衆と練習する場面があると「na na na〜」と同様に定着したかもしれない。

 「みなさんも一緒に歌ってください。」とは言っていたが、何の歌が始まるのか聴衆は理解できず、とまどってしまった感じである。この新バージョンは、尼崎でこけてから、やらなくなったが、導入方法を変えて続けて欲しかったと思う。

 びわこホールでのライブは、尼崎と一転して落ち着いたライブになった。本人は「尼崎では、私がみなさんのノリについていけませんでした。」と反省の弁を述べていたが、やはりライブの流れが聴衆と倉木麻衣との間に差があったことは言えるだろう。

 びわこホールのライブは、倉木麻衣が聴衆の「麻衣ちゃーん」の声に「はーい、何でしょうか?」と応えたり、全体的に倉木麻衣の家でライブをしているのかと思うくらい倉木麻衣はリラックスしてライブをしていて、聴衆の方も、ゆったり落ち着いて聴けた。個人的には一番思い出に残るライブであった。
 このときに尼崎でなかったReach for the sky、Feel fine!が加わったがReach for the skyはこのライブにだけ歌われたということになった。
 また、落ち着いたライブの中でも、当初のコンセプトは捨てておらず、尼崎と同じようにSAMEなど乗り重視の曲も残っていた。

 当初の倉木麻衣のパワーを全面に出すライブというコンセプトと、バラード系を望む聴衆が少なからずいたということから、セットリストはゆれたと思う。しかし、両者の要求を満たすために、三部構成となったようだ。
 第一部はWish You My Bestという意味で倉木の代表作が歌われ、聴かせる曲もこの部分に含ませた。
 第二部では尼崎で当初意図していたように、ダンスを盛り込んで、倉木麻衣の力強さを前面に出すノリ中心のライブとなった。
 第3部はアンコール以下のバラード系2曲と、エンディングのalwaysという構成となった。
 もちろん、バラード系2曲というのは松山ライブ以降の話だが、この構成は多くのニーズに応えるということでは妥当であったように思う。

 セットリストは京都からファイナルまでは、曲順は少し変化しても、新曲が入る以外は基本的には変わっていない。
 セットリスト的には、パワーという部分で不十分だったとも思えるが、倉木麻衣のライブとしてはこのくらいがいいと思う。尼崎ではパワーは前面に出せたと思うが、私としては「やかましい。」部類だったと思うので「さじ加減」の問題だろう。

四国公演以降のセットリスト
1.Time after Time
2.Love,Day After tomorrow
3.Secret Of my heart
4.Can’t forget of my heart
5.風のららら
6.mi corason
7.Tonight,I Feel close to you
8.The Rose
9.PERFECT CRIME
10.NEVER GONNA GIVE YOU UP
11.Stepping ∞ Out
BLACK OR WHITE 
メンバー紹介
12.I don’t wanna Lose you
13.key to my heart
14.Everythings's All Right
15.Brand New Day
16.Delicious Way
17.Come on!Come on!
18.Stand UP
19.Feel fine!
アンコール
20.明日へ架ける橋
21.Stay by my side
22.always
 

セットリストの変遷
 京都以前は、Love,Day After tomorrowがアンコール後の最初の曲であったが、四国公演以降は新曲の「明日へ架ける橋」が入り、Love,Day After tomorrowは最初から2曲目に入った。ただこの曲順は少し議論のあるところだろうが、前半は倉木の代表作を歌うコーナーと考えれば整合するだろう。
 
 途中で、Can’t forget of my heartがセットリストから消えたりしたが、基本的には曲順は変わるものの、このセットリストでファイナルまでいくことになる。
 
 セットリスト自体は同じものであるが、倉木麻衣のライブに同じものはない。典型的にわかりやすいのは、Stand UPで最初は新バージョンが失敗したので、導入部で聴衆の合唱なしで歌われることになるが、途中からステージ奥の上段に立ったり「楽しんでますかー。」と聴衆に声をかけて倉木自身の「煽り」を入れている。
 細かく見ていくと、どの曲も歌い方や演出の仕方を少しずつ変化させているのだ。途中でのJeffreyの煽りかた合いの手の入れ方も少しずつ工夫されている。

 倉木麻衣のライブは、聴衆のアンケートを参照し、その日のライブのDVDを見るなどしてメンバー、スタッフ、倉木が検討して次のライブに活かしている。
 ライブツアーの運営は、倉木と一体になってライブを成功させアンケートなどで倉木サイドに意見を寄せたファンとの共同作業でもある。

四国から長野
 この間のライブは、セットリストも固定してきて地固めということもできるし、倉木にとってもライブの流れが計算できるようになる過程であったろう。髪型の方も、いろいろと変えていたが、倉木麻衣の提供する商品の本体は歌であるので、ライブでの表現方法も工夫されることになる。

 しかし、この時期のライブは、会場も倉木麻衣も全体的にライブを楽しむということを心がけていたように思う。特に福井は、会場も倉木も、わきあいあいとして楽しめたライブであった。
 

ろばさんの部屋 > L・O・V・E DOOR