Wish You My Best〜Grow,Step by Step
                        ツアーレポート(1)

緒論
 年末の紅白歌合戦に出場し、ベストアルバム、DVDの発売と2004年の倉木麻衣の音楽シーンは怒涛のように始まり、そして、ライブツアーも発表された。

 視聴率は落ちたものの紅白は歌番組としては全国全年齢に有効にPRできる番組だ。それにあわせてベストアルバム、DVDと戦略としてはまずまずだ。
 メディアに姿を見せるとともに過去の経歴たるベストアルバムを出して新規ファンを獲得するという戦略である。

 そして倉木麻衣のよさを知ってもらうにはライブが一番適していることと、ライブにあわせてlivedoorというプロバイダーを通してのライブ日記の公開。
 これによって、新規ファンから固定客への定着化と倉木麻衣のキャラクターをPRできるので効果的であったと思う。また、既成のファンにも楽しめる一連の企画であった。さらに衛星や地上波で平安神宮ライブが放映されたのも効果的だったと思う。

 ただ、このライブの位置づけが既成ファンには困難だったかもしれない。というのは2003年5月発売の「風のららら」以来新曲が出ていないので前回のFAIRY TALE tour や秋に行われたSpecialライブとの違いをどうするのかという点が問題であったからだ。

 セットリストが同じようなものなら、前回のライブと変わらないわけである。もちろん、同じ曲をアレンジや演出を変えて歌うことでもライブは成り立つだろうけれど、倉木麻衣は活動中のアーティストであり、あまり新曲を出さなくなったベテランの人が昔ながらの代表作を歌うようにはいかないだろう。

 タイトルからすると、ベストアルバムのようなライブということになるだろうけれど、全部シングルCDのA面集ということも考えられる。しかし、それでは既成ファンに納得してもらえないかもしれない。
 何らかのコンセプトが必要なのかもしれないが、最初のに考えたコンセプトは尼崎のライブで垣間見られるがそれは後述する。
 Grow,Step by Stepというタイトルは「ファンと一緒に少しずつ成長してゆきたい。」ということで付けられたサブタイトルである。

最初のコンセプト
 今回のライブでいつもと違うところは、バックにダンサーが付いたところ。それと尼崎ライブでは、後のライブでは消えたがSAMEなどアップテンポな曲が中心で、いつもの定番の曲を除いてアップテンポな曲が多くダンスミュージック中心のライブという印象で倉木麻衣本人が、歌とは別にダンスのみを披露する場面もあった。

 この尼崎ライブでのコンセプトはアップテンポな曲中心で観客全員で踊れるノリ重視のライブにしようとするものだと思えるし、いつもは、静かな曲調のCan’t forget your loveなどもアップテンポにアレンジされ、全体的に倉木麻衣の力強さを前面に押し出している。
 
 後に、このコンセプトは修正されて、前半は聴かせる曲、本編後半は当初の予定通りのアップテンポ中心という具合になった。これは、じっくりとバラード系など倉木の曲を聴きたいというファンもいることから、自然な流れであったように思う。
 その意味ではLove Day After Tomorrowが2番目に来ていることやCan’t forget your loveがアップテンポにアレンジされているのに前半に来ているのはやや流れからして問題があるように思うが、Can’t forget your loveについてはそんなに違和感はなかったものの、やや考慮すべきものがあると思う。

ライブの構成
 今回のライブの構成としては、最初にTime after time次にLove Day After Tomorrowといった倉木の代表作を入れて、続いて倉木のシングルカット曲などの代表作を入れる構成となっている。
 前半では聴かせる曲中心と先述したが、アップテンポな曲やアップテンポにアレンジし直されている曲も多くバラード系が少なかったように思う。

 このことは昨年秋のSpecial Liveが全体的にゆっくりと歌いバラード調にしていたのと対称的となっていて、今回のアップテンポで力強さを表現するというコンセプトは守られているように思う。
 メンバー紹介後の第二部といえる部分はダンスミュージック中心で会場と倉木が一体となって盛り上がる部分でバックダンサーも活躍する。
 アンコール後は、最初はLove Day After Tomorrow、Stay by my side、alwaysであったが、途中から「明日へ架ける橋」が最初に入り、Love Day After Tomorrowは前半に回った。
 特に倉木にバラードを期待しているファンは、前半で聴かせるバラードが少なくなったと感じていたろうが、その不満はアンコール後に解消されることになる。
 特にStay by my sideは毎回アレンジが変化して、今回は聴き応えのあるものに仕上がっている。

ライブの評価
 ライブの見方、評価の仕方にはいろいろあるだろう。もちろん倉木麻衣に何をもとめているかにもよるだろうし、個々のファンの音楽観にもよるだろう。
 倉木麻衣の曲で会場が一体となって盛り上がるという意味では今回のライブは概ね成功したと言えるし、尼崎ライブよりもアップテンポな曲が減ったぶん不満は残る。
 これに対して、倉木麻衣に静かなバラードで感動したいと思う者にとっては、そのような曲が少なめになっていることは不満となろう。

 ライブのコンセプトによってセットリストや個々の曲のアレンジ、演奏方法も変わるであろう。そして首尾一貫したテーマを持つライブとなれる。
 しかし、それでは不満を持つファンもいるであろう。そこでどこまであらゆるファンの要求に応えるかが問題になるが、マーケティングの理論からアンケートによってファンの意見を吸収するのはいいとしても、まとまりのないライプとなる可能性もあり難しいところだ。

 Can’t forget your loveがセットリストから一時消えたりしたのは、そのような迷いでもあったろうが、アップテンポなアレンジになっているとはいえ、この曲を入れたことは聴かせる曲を求めるファンに対する一種の妥協点であったろう。
 
 今回は、観衆と一緒になって盛り上がりダンスを前面に出したライブで倉木麻衣の力強さを前面に出したかったと思えるが、尼崎を除いてそれを通す事はできなかったように思うが、あらゆる要求を考慮すれば致しかたなかったとも言える。
 今後、倉木麻衣がライブの回数を今より増やせれば、様々なコンセプトを持ったライブができると思うので、倉木麻衣の今後に期待したい。


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