倉木麻衣のライブ

倉木麻衣のライブ

 倉木麻衣ほどCDとライブの差が激しい歌手はいないと思う。ライブを聴いた後でCDを聴くと、CDがいかに平面的で乾燥した干物のように感じる。
 ライブでの倉木麻衣は、CDとは全く別人なのだ。倉木麻衣は声量がないといわれることがあるし、CDを聴く限りでは、やはり抑え目に作っているのか、CD編集のコンセプトが疑われる。
 もちろん、CDでは曲のコンセプトや原譜面での意図したようなイメージに仕上げるだろう。ただ、それはCDの編集者の意図が大きく左右し、ライブで倉木麻衣が表現しているものとは異質のものだ。
 

初期のライブ

 倉木麻衣の紹介ページでも書いたように、初期のライブでは一緒にライブをするEXPERIENCEの黒人4人組みのメンバーや、ゲストで来たCybersoundのマイケル・アフリックの圧倒的な歌唱力、ライブパフォーマンスに圧倒されていた。
 彼らは決してアメリカでは著名というわけではないが、アメリカでのプロのレベルはかなり高い。特にEXPERIENCEはいずれのメンバーも6〜8歳くらいからゴスペラーズとして活動したり、プロの活動をしていた選りすぐりのメンバーだ。
 彼らに混じって、身長158センチの小さな日本人の女の子がいることが場違いとも思えるものだった。どう見てもアメリカ人ミュージシャンの本格的ライブに日本人の女の子が迷い込んでおたおたしているという印象が拭えず、歌やライブパフォーマンスも、一部ネットで揶揄されたように「お遊戯」と言われても仕方ないかもしれない。さらに、極度のあがり症の倉木麻衣としては、緊張で顔がこわばる場面もあり危うさもある。

 ただ、サポートバンドが仮に日本人のバンドで、アメリカから応援がなければ、それなりに10代美人系歌手のライブとしては、成功したかなとは思う。
 また、はじめてのライブということと、倉木麻衣がアイドルではなく本格的歌手としてライブ中心にやってゆくには、アメリカの歌手がお手本を見せながらライブの経験を踏ませるということはよかった。
 歌については、極度に緊張していているもののしっかりと歌っていて、B’zの2人もB’zのファンクラブの会報で、倉木麻衣のライブについて「はじめてのライブであれだけ歌えたら大したもの。」と評している。


極度のあがり症

 倉木麻衣の性格は、真面目な性格だけれど、それが災いしてか、極度のあがり症だ。それゆえ、あちこちのライブ会場で失敗をして、被害者を出したようだ。しかし、ライブを重ねるごとにライブでのテクニックはものすごい勢いで身に付けている。
 近時のライブでは、かつてアメリカ人歌手に圧倒されていた小さな女の子の面影すらない。さらに、2週間見なければ別人のように上達している。
 結局、極度の緊張で失敗が多いなら、CDのみにしてライブをやめるか練習して実力を付けるしかないのだが。倉木は後者の道をとった。
 倉木の所属するGIZAには他にも歌手はいるものの、売り上げのほとんどは倉木のもので、野球で言うとエース、相撲でいうと部屋で1人の横綱という立場であり、CDが初期のように売れなくなった近時では特に全国ライブなど会社としての収入原は倉木麻衣に依存している面があり、その立場上実力が不十分なときからステージに立ち続けなくてはならず、倉木麻衣は倒れるわけにはいかなかった。
 学生生活を優先するものの、かなりの負担がかかっていた。実力が不十分で多くの批判を浴びても、今ある実力で全力を尽くすしかなかった。

 倉木麻衣は今でもライブで手を胸に当て緊張を抑えるしぐさをすることが多い。この極度のあがり症、失敗の恐怖、さらに常にライブに来た人への心遣いをして期待を裏切らないようにする気持が急速な成長の源泉となっている。


EXPERIENCE

 倉木麻衣のライブで絶対に見逃せない存在はEXPERIENCEだ、彼ら黒人4人組の演奏は日本人ではとても真似すらできない音楽性をもち、CDでは聴く事ができないすばらしい演奏をしてくれる。
 ライブ独自のアレンジも本格的洋楽という部分を演出してくれている。よくぞEXPERIENCEが倉木麻衣と組んでくれたという奇跡にも近い回り逢わせを感謝するしだいである。


二度と同じライブはない
 倉木麻衣のライブは毎回進化する。アンケートや毎回ライブのDVDをライブ後検討して、曲のセットリストやライブの構成まで変えてゆく。
 倉木麻衣自身の進化もすさまじい、かつては10代の吸収力はすごいと言われたが、20代になっても進化は加速すしている。
 別のサイトで紹介されているが、倉木麻衣のライブの客には若い美人系の歌手というのを目当てに来ているという者はほとんどいないと一目でわかる。
 ライブ会場前で集まっている客を見て「この人達は今からクラシックを聴きに行くのだ。」と言われても違和感はない。
 しかも、わりと厳しいファンが多く若い人が中心であるが年代層は広く、かなり洋楽やいろいろな音楽を聴き込んだ人が多いと思われ、アンケートでも厳しい意見が寄せられていると思われる。1日でガラリとライブが変化することもある。


百聞は一見にしかず。

 「百聞は一見にしかず。」言い古されたことわざだけれど、特に倉木麻衣のライブはそうだ。倉木の曲を聴いていないか、CDの一部だけ聴いて「倉木は声量がない。」といわれる事があるが、ライブでの力強く伸びのある豊富な声量は初めてライブに来た者を驚かせる。
 まったくCDとは全く違う活き活きとした歌いっぷり、豊かな表現力。それよりも、一曲一曲に対して、一期一会で次はないかのような真剣さが伝わる。
 ライブを見ずして倉木麻衣は語れない。


加点法のライブ

 倉木麻衣のライブは、もはや加点法でないと採点できないと思う。一応完成されたもので減点要素がなくても、それに対して何かプラスαを足そうとしている。

 私が受けている司法試験は、知識的に完璧に書くだけなら他の受験生もしているので減点法で差がつかない。完璧な答案の上に説得力、理論構成力など、他の受験生にないプラスαの知識がないと駄目なのだ。。

 倉木麻衣のライブも減点要素はない。毎回、前の公演よりも何かプラスαを模索している。もはや、減点法では点数はつけられないのだ。

 この点、倉木麻衣のライブではMCやダンスについて減点部分があるようにいう意見がある。
倉木自身「見せるライブの要素を重視している」こともあり、このような意見は傾聴には値するであろう。

 しかし、倉木麻衣は歌が商品の本体でありそれらは商品本体の歌に対する装飾品のようなものであり歌本体と同列に評価するのは妥当でない。
限られた時間で、最大限歌を披露することが倉木麻衣のライブで最優先されることだと思う。

 飽くなき探究心は、倉木麻衣の歌唱力の向上とともに高く評価される


ファンを大切にする真のアーティスト

 倉木麻衣のライブは最初はアリーナクラスの大会場で行われたが、FAIRY TALEツアーくらいから、小さいホールを中心にするようになった。CDの売り上げは低迷しているが(それでもデビューから18曲連続オリコンベスト3以内でトップレベル歌手の地位は保っている。)ライブの観客動員数は増加している。
 大都市圏では、やはり大き目のホールでやるが、そのとき倉木は3階の一番奥のファンを非常に気にしてしまい、必要以上に声を出していて必死になっている。
 できるだけ3階の人の方を見ながら歌ったり、ライブのあちこちで「こんな大きな会場に詰め込んでごめんね。」と言いたいような発言が目立つ。
 やっぱりライブは1階の前の方で聴きたい、チケットを手にして3階の奥の席だったら、やっぱりがっかりする。そんなファンの気持を十分わかっている。
 それでも、その日のライブはやりとげなければならない。何とかしないといけないという必死の歌いっぷりを見て「この人に対して大ホールでやれというのは酷かな。」とそう思ってしまう。また音響効果とかライブ用のホールということなど音へのこだわりがあるようだ。

ろばさんの部屋 > L・O・V・E DOOR