倉庫が基本

倉庫での作業

 新入社員だった私は、最初は店内の掃除ばかりしていたことは、先の記事で書きました。お店に来られている顧客が、私に商品の位置を訊き、私が正確に答えられるようになったら、今度は倉庫に回されました。

 私が後に店長になる直前、私は倉庫の作業を最も重視して仕事したのです。倉庫は重要なのですが、そのときの私は、倉庫というと地味な裏方というイメージしか持っていませんでした。
 倉庫というと、商売というよりは、力仕事というイメージですし、実際の仕事もそうでした。当時、何も分らない私は、店舗内の商品位置を、ようやく覚えたところでした。倉庫の仕事は、店内で商品が少なくなったところに商品を補充するというものでした。

 当時は、洗濯石鹸も粉の4.1Kgとか、今のようにコンパクトでなかったので、ケース単位で倉庫から店舗に運ぶのは、本当に力仕事でした。卸し問屋から商品が納入されると、商品と伝票に相違がないか検品し、それを店舗の棚に補充、または、倉庫に搬入しました。倉庫整理という作業も大変でした。
 新入社員の私の仕事としては、倉庫からの品出し、数が少なくなった商品を記録し、仕入れ担当の人に伝達するというものでしたが、そのうち商品知識がつくと検品をまかされました。
 さらに、倉庫からの商品補充を毎日していると、どの商品が、どれだけ売れるのかが分ってきました。そして、少しずつ仕入れもまかされるようになりました。

 もう、この頃になると、個々の商品についての知識も十分になってきます。取り扱い商品名、定価、売価、納入価のほか、それぞれの商品が何であるか、使い方などの知識が付いてきます。
 そうなってくると、いよいよ店舗で対面販売をすることになるのですが、それは、後の話しとします。

在庫管理について

 商売にもいろいろあって、実は難易度も違うのです。とりわけ化粧品屋さんというのは難しい業種だと言われていました。
 どうして化粧品屋さんが難しいというと、接客時点での難しさもあるのですが、ここでの主題は在庫管理ですので、在庫管理についてだけ言いますと、それは多品種であることです。
 私が店舗にいたとき、脱サラして化粧品屋さんをした人が、店を潰してしまうケースが散見されました。
 だいたい化粧品をやる人は、社交性があって、人に好かれる女性店主の場合が多いので、顧客が少なくて潰れるというのは少なかったと思います。
 では、どうして潰れたのでしょうか。

 言うまでもなく、商売は仕入れ金額より高い価格で商品を売ることにより利益が出ます。しかし、それは個々の商品についてです。店全体ではどうでしょうか。基本的に、総仕入れ金額よりも、売り上げが多くなければなりません。

 例えばA商品が仕入れ価格が70円、売価が100円とします。そして、仕入れ単位が5個であるとします。そうすると、一回の仕入れで70円X5個=350円となります。
 全部売れると500円なのですが、在庫ゼロということはできませんので、常に店舗に在庫を抱えている必要があります。例えば3個売れた時点で次の発注をするとします。
 その場合、3個売れたとき売り上げは300円で、利益は30円X3個で90円です。そして、次の仕入れには、350円が必要になります。
 300円回収したところで、350円が必要になるというのは、きついですね。

 数字を出してしまい、少しややこしくなりましたね。要は、少しでも仕入れ過剰となると、利益が飛んでしまうということが言いたいわけです。
 特に化粧品は、品種も多い上、微妙に違う色も揃えなくてはならず、仕入れのコントロールが極めて難しい業種なのです。

 商売をしたことがない人にとっては、意外かもしれません。逆にプロの人は帳簿上、在庫は資産なのでマイナスではないと思うかもしれません。黒字なのですから。

 しかし、現実には、売り上げより仕入れ金額が多いと、店舗の運用資金は失われます。最悪の場合、黒字なのに、お金がなくて倒産というケースもあるのです。
 経理は、経理の人の頭の中の世界であって、店主は現金の有無に常に気を配らないといけないと思うのです。

 今月は、いくら仕入れて、いくら売ったか。

 それだけが大切なのだと思います。

品切れは起こせない
 顧客が、ある商品を買いに来て、その商品が無かったら、どう思うでしょうか。「その店にいけば、そこにある。」ということは、その店の信頼であり、顧客にとってプレミアムなのです。
 
 そうであるなら、品切れが起こらないように大量に在庫しておけばいいのではないかと思うでしょう。しかし、在庫を持つにはお金がかかりますし、仕入れ金額よりも売り上げ金額が多くないと利益は出ません。
 仕入れというものは、品切れさせないという要求と、売り上げ金額より大きくならないという微妙なバランスの上でしなくてはならないのです。

 ただ、商品は全て均等に売れているわけではなく、よく売れるものと売れないものがあり、個々の商品の動きを掴んでいないといけないのです。
 どの商品を大量に在庫し、どの商品を必要最小限にするのか、それを掌握することが「仕入れが売り上げを上回らないようにする」ということのために大切なのです。

 注意的に書きますと、店舗にスムーズに商品が流れるには、倉庫からの出庫がスムーズにできることが必要で、倉庫整理というものは日々工夫すべきことは当然要求されます。

棚効率
 よく売り場面積に対する売り上げはいくらかと言われます。売れ筋でないものは在庫せず、売れるものばかり置いてはどうかといわれます。
 特にコンビニエンスストアのように、少ない売り場面積で多くの品種を扱う場合、それは死活問題でしょう。棚にあるものが、どれも売れ筋というのは本当に理想でしょうね。

 売り場面積あたりの売り上げを上げるためには、棚の中を売れ筋商品ばかりにしなくてはいけません。売れない商品を置いていると、その分効率が低下します。
 店舗の維持という意味でも、売り場面積に対して家賃が発生しているのですから、生産性の無い空間というのは無駄なわけです。
 今では、顧客のアメニティーということが重視されて、ゆったりした空間をとる店が増えました。しかし、その分、棚の方は効率性が求められていて基本は変わりません。
 ただ、こういうことには反省点があるのですが、別に書きます。

 棚効率は、別論なのですが、倉庫の仕事、仕入れというのは、店舗の運営にとって、利益を左右する根幹部分なのです。


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